〖勉強ノート〗日本語の歌は1小節に何音入る? 英語と比べたら「約1.9倍」の差があった
こんにちは、Sound Inspireです。
AIと一緒に曲を作っていると、毎回ぶつかる問いがあります。
「この1小節に、歌詞は何音まで入れていいのか?」
詰めすぎると早口で聞き取れない。少なすぎると間延びする。
そこで今回は、研究論文と計測データを調べて、日本の楽曲と英語の楽曲を比べてみました。
先に結論です。
標準的なJ-POPは、1小節に6〜10モーラ(モーラ=「か」「ん」「っ」など、かな1文字ぶんの音の長さ)
英語のポップスは、1小節に4〜7音節
同じ内容を伝えるのに、日本語は英語の約1.9倍の音が要る(話し言葉のデータから)
ただし、注意がひとつあります。「日本の曲全体の平均」を、1小節あたりのモーラ数で直接測った研究は見つかりませんでした。今回の数字は、論文の実測値と、拍の仕組みからの推定を組み合わせたものです。
日本語の歌は「1音符に1モーラ」
日本語の歌は、基本的に1つの音符に1モーラをのせます。
なので、1小節のモーラ数は「どの長さの音符で刻むか」でほぼ決まります。
8分音符で刻む → 1小節に最大8
16分音符で刻む → 1小節に最大16
曲のタイプ別にすると、こうなります[経験則]。
曲のタイプ | 刻み | 1小節のモーラ数 |
わらべ歌・唱歌 | 4分〜8分音符 | 4〜8 |
バラード・サビ | 伸ばしが多い | 4〜8 |
標準的なJ-POPのVerse(BPM120〜140) | 8分中心+16分 | 6〜10 |
ボカロ・早口の曲 | 16分音符 | 10〜16 |
英語のポップス | 音節単位 | 4〜7 |
英語のラップ | 音節単位 | 6〜14(制作者向けの目安) |
60年代から90年代で、歌詞は「詰め込み型」になった
ヒット曲200曲を年代別に分析した研究があります(Azechi 2007)。
各年代50曲ずつ、合計3,760フレーズを、歌詞の区切りごとに調べたものです。
60年代 | 70年代 | 80年代 | 90年代 | |
7文字(七五調)の行 | 37.8% | 24.6% | 16.3% | 8.4% |
9〜12文字の長い行 | 11.6% | 18.0% | 22.6% | 38.0% |
わらべ歌の型に当てはまらない新しいリズム | 17% | 42% | 44% | 60% |
※3行目は「3モーラで始まるフレーズ」の中での割合です。
分かったことは3つです。
① 刻みの基準が、60年代の4分音符から、70年代に8分音符へ移った② 七五調が減り、話し言葉に近い長い行が増えた③ 90年代には「ん」「っ」を強い拍に置く、英語のようなリズムが増えた(例:スピッツ「涙がキラリ☆」)
日本語の歌は、少しずつ英語の歌い方に近づいてきたと言えます。
※データは1996年まで。2000年以降は調べられていません。
なぜ英語は少ない音で足りるのか
7か国語の話し言葉を比べた研究があります(Pellegrino ら 2011)。
1秒の音節数 | 1音節の情報量 | 1秒の情報量 | 音節の種類 | |
日本語 | 7.84 | 0.49 | 0.74 | 416 |
英語 | 6.19 | 0.91 | 1.08 | 7,931 |
※情報量はベトナム語を1とした相対値
日本語は速く話します。でも、1音あたりの情報が英語の約半分です。
0.91 ÷ 0.49 = 約1.9倍。
同じ内容を伝えるのに、日本語はこれだけ多くの音が必要になります。
たとえるなら、英語は「1つの箱にたくさん詰められる」言語です。「strengths」のような重い音節を、1つの音符にまるごとのせられます。日本語は箱が小さいぶん、箱の数で勝負します。
ここからは僕の推測です[仮説]。英語の1小節(4〜7音節)と同じ内容を日本語で歌うと、7〜13モーラが要る計算になります。訳詞で内容を削らないといけない理由、日本語の曲が16分音符の詰め込みに向かった理由のひとつかもしれません。ただし、これは話し言葉のデータで、歌のデータでは確かめていません。
なお、1秒あたりの情報量は、この研究では日本語と英語で同じになりませんでした。17か国語に広げた別の研究(Coupé ら 2019)では、どの言語もおよそ39 bit/秒の近い値に収まっています。
実際に測った「歌う速さ」
対象 | 速さ | 補足 |
「初音ミクの消失」 | 毎秒7.45字 | ボカロのカラオケ配信曲82曲で最速 |
「裏表ラバーズ」 | 毎秒6.17字 | 同じ調査で2位 |
米津玄師「Lemon」 | 毎秒2.21字 | 曲全体の平均(前奏・間奏を含む) |
Billboard Hot 100(5,100曲) | 毎秒約0.6語 | 1990年以降のヒット曲はこれより速い |
秒から小節への換算は、この式です。
1小節の音の数 = 1秒の音の数 × 240 ÷ BPM
たとえば「Lemon」(BPM 87)なら、2.21 × 240 ÷ 87 = 約6字/小節。間奏も含めた平均なので、歌っている小節はもっと密になります。
注意点もあります。
ボカロの調査は「文字」で数えていて、モーラ数とは一致しません(元記事は現在リンク切れ)
Billboardの調査は、繰り返しのサビが省略された歌詞を使っている可能性があります
作詞・作曲での使い方
調べた結果を、僕は自分の曲作りにこう当てはめています。
Verse:1小節に6〜10。早口にするなら12〜16
サビ:1小節に4〜8。伸ばしで言葉を届ける
英語を混ぜる行:英語1音節に日本語2モーラ分の内容が入るので、音符を減らして「抜け」が作れる
僕の作詞ルール(1行12モーラまで、1行は約2小節)は、1小節あたり約6。標準的なJ-POPの中では、ゆとりのある設定でした。
おわりに
日本語の歌は「音の数」で、英語の歌は「1音の重さ」で内容を運んでいる。
数字にしてみると、詰め込みすぎ・少なすぎの判断が、感覚ではなく基準でできるようになりました。
AIに作詞を頼むときも、「1小節に何モーラ」と数字で伝えるだけで、歌いやすい歌詞が返ってきやすくなります。無駄な9割の試行錯誤を減らして、創造的な1割に時間を使うための、小さな物差しです。
次は、自分の曲のメロディから、実際に1小節あたりのモーラ数を集計してみるつもりです。
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参考
※2026年10月時点で確認できた資料をもとにしています。曲のタイプ別の数値は推定で、曲によって大きく変わります。




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